ネット小説 【LAM】 ≪4≫ACT2-A

表紙
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 ミナトとはいつも、『空き地』で会う。
 そこはNARとAR、唯一の接点だ。大切な妻、夫、子供たち。支配者と奴隷に分かれても、捨てる事のできなかった愛情を満たすための場所である
 『空き地』は元体育館を再利用している。NAR用の扉とAR用の扉が、新たに向き合って作られていた。中心には特殊ガラスが据えつけてあり、それごしに話をすることができる。1週間に30分間のみの、短い逢瀬だ。
 万全を期して、ARは防護スーツを着用する。頭のてっぺんから足の先までを覆うスーツだから、肌と肌で抱き合う事ができない。
 だが、自分達にとっては関係のない話だ、とヤマトは思う。
 自分と同じ顔を抱きしめるなんて、気持ち悪くてできやしない。

 

「ヤマト」

 

 不安げに辺りを見回していたミナトは、ヤマトを見つけて、走り寄ってきた。
 特殊ガラス越しに顔をほころばせる。

 

「よかった、元気そうで。先週会えなかったから心配してたんだ。でも死亡
者リストにヤマトやユイの名前がなかったから、大丈夫だとは思ってたけど……」
「当然だろ。1回会えなかったくらいでうろたえるな」

 

 ジーンズに手をつっこんだまま、ヤマトはぶっきらぼうに答える。
 周りには幾人もの人々が、つかの間の再会を味わっていた。

 

「どう、ユイは元気? 風邪ひいたりしてないかな」
「大丈夫だ、安心しろ」

 

 ミナトとユイは幼馴染だが、それだけの繋がりでは面会は許されない。2世代までの血縁者のみである。だからいくら会いたいと願っても、声を聞く事さえできない。

 

「そっか、良かった」

 

 ユイの無事を聞き、ミナトは表情をゆるませる。双子とはいえ、一応自分の兄に当たるのだが、ヤマトはいつも、ミナトの『子供っぽさ』に呆れてしまう。
 感情をおもてに出しすぎだ。その素直さが、ヤマトには鬱陶しい。

 

「これで用はすんだろ。オレはもう行くぜ」
「あ、待ってヤマト」

 

 背を向けるヤマトを、ミナトは慌てて引き止めた。

 

(まだ何かあるのかよ)

 

 ヤマトは盛大にため息をつきつつ、振り返る。わざとらしく嫌な態度を出しても、この兄には通じない。

 

「あのさ、嫌な噂を聞いたんだ。関東地区の収容所から、『ショウフ』を5人、作るって」
「ショウフ? ……って、『招婦』のことか。あの、おかしな書き方をするやつだろ」
「うん……」

 

 ミナトはうつむく。
 書き方に関しては、ARの罪悪感が多少見えなくもない。だがやることは同じだ。どこまでいってもNARはARの奴隷なのである。
 潔癖なミナトが、この言葉をあえて口にしたことに、ヤマトはひっかかった。
 何だ?

 

「それで、ヤマト。招婦の発表はいつも、インターネットで下の名前と年齢だけが発表されて、そこから競り落とされるんだけど、その中に『ユイ』の名前があったんだ」
「……。へえ」
「それで、年齢が17歳だったんだよ。ユイも17歳だよね。僕らと同じ歳だから…。ヤマト、何か聞いてない? まさか、あのユイじゃないよね? 違うよね」
「痛えな、つかむなよ」

 

 腕を振り払い、ヤマトは冷めた目でミナトを見る。

 

「俺はそんな話聞いてない。ユイの様子から見ても、そんな話は出てないと思う」
「そっか、そうだよね。ユイのわけないよな」

 

(だから、そんな顔をするなよ)

 

 イライラする。
 あからさまに安堵した表情も、思った通りにしか反応しない単純さも、全て。
 ヤマトはそのまま踵を返し、収容所の扉へと歩き出した。引き止めるミナトの声は、当然のように無視をした。

 

 

 

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