ネット小説 【LAM】 ≪13≫ | ACT4-C

表紙
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 神崎リョウはLAMを統括局の下士官にタダで流す代わりに、収容所の見取り図など、さまざまな情報を聞きだしているという。

 

「収容所は、実は穴だらけなんだ」

 

 研究棟を歩きながら、リョウは言った。真っ白に塗り込められた長い廊下。

 

「監視カメラも、設置されている三分の二しか実際に動いていない。AR(アール)どもは資金のほとんどを、アルカディアのワクチン研究に費やしている。あとは病院施設の充実だな。だから収容所にまで手が回らない。施設内にARがほとんどいないのはそういう理由だ」
「けどオレたちにとっては鉄壁だぜ? 逃げ出そうにも逃げ出せない。あの電圧壁がある限り」
「確かに電圧壁は、触れると即死の高い電流が流れている。外を固めて、オレたちの脱走をくじき、実は内部で手抜きしているんだ。即席の支配者にはよくある話だ」

 

 電圧壁の他にも、脱走を防止するものはある。アルカディアウイルスだ。たとえセキュリティが脆弱だと気づいても、感染の可能性を考えると二の足を踏むNAR(ナール)は多いだろう。
 ヤマトは舌打ちした。

 

「じゃあおまえは、感染を恐れてユイを連れ出さなかったんだな? それよりもミナトへの一方的な復讐を選んだってわけか。そんなんでユイをアイシテルなんてよく言うな」
「誘ったさ。でも笑って断られた。冗談だと思ったようだ。信用されてないからな、オレは」
「普段の行いだな」

 

 階段を下りる。労働時間帯の今、通る人間は誰もいない。

 

「だが倉地ミナトの誘いには乗ったわけだ。おまえとの面会で、ユイの寝場所の見当をつけていたのだろう。2人が捕まったのは、深夜2時、収容所の門直前だったらしい」
「それもおまえが密告したんだろ」

 

 リョウは肩をすくめた。

 

「知ってるか、ヤマト。『街』には、脱走したごく少数のNAR(ナール)たちがひっそりと隠れ住んでるんだ」

 

 そんな話は聞いた事がない。
 ミナトから聞いた話では、『街』は薄汚れたビルがそびえるコンクリート・ジャングルだという。クーデターの際に壊された建物はそのままになっているものが多く、見るも無残な状態らしい。ただ、病院設備のみは完璧に復元されていて(むしろ飛躍的に進歩している)、ミナトを含めほとんどのARは病室に住んでいるという。
 廃墟が乱立する『街』だからこそ、隠れ住むには最適なのだろうか。

 

「彼らはレジスタンスまがいの活動をするでもなく、ただその日を必死に生きている。時折ARによる『NAR狩り』が行われるそうだ。捕まったらもちろん、その場で銃殺」

 

 研究棟、地下2階。蛍光灯が青白く光っていた。
 リョウが壁を手でなぞる。無数にはめこまれた70センチ四方の白いタイル。立ち止まり、姿勢を正し、フ、と息を吐いた。――瞬間。
 ガッ、と彼の右拳が炸裂し、1枚のタイルがボロボロに崩れ落ちた。
 ヤマトは唖然とする。

 

「おまえ、意外に肉体派かよ」
「この穴は工事のミスにより、後からタイルをかぶせたものだ。水道管でも通すつもりだったらしい。しばらく進めば水路にぶつかる。そこは施設内のどこにでも通じているから、2人が監禁されている牢屋にも行ける」
「こんなに派手に壊して、ARに見つからないのかよ」
「今からもっと派手なことをしでかしにいくんだろう?」

 

 神崎リョウは笑む。
 穴は真っ暗で、どれだけ目をこらしても先は見えなかった。

 

 

 

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