ネット小説 【LAM】 ≪14≫ | ACT4-D

表紙
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 時間との勝負だ、とリョウは言う。だから、急がなくてはならなかった。
 穴は狭く、前も後ろも見えない暗闇の中で強烈な圧迫感がヤマトにのしかかった。腹ばいで進むしかなく、腕がひりひり痛い。狭所恐怖症ではないのだが、酸素が薄から息苦しく、あと5分でも長ければ、前を進むリョウに延々とした文句の羅列をお見舞いするところだった。

 

「研究ルームを出て14分。警報が鳴り出すまであと16分だな」
「何だよ、警報って」
「人手不足のAR(アール)は、カメラを常に監視する人間がいない。カメラにはIDセンサーによる探知装置がついていて、ID登録されている人間が姿を消して30分以上経てば、警報が鳴るようになってる」

 

 情報量の多さに、ヤマトはむしろ呆れてしまう。

 

「おまえ何でも知ってるな」
「LAMはNAR(ナール)よりもARの需要が高い。奴隷扱いされているオレたちよりも、本当に哀れなのはあいつらだ」

 

 だが、ミナトは幸せだとリョウは言う。ミナトこそ、LAMの存在を知ったら誰よりも欲しがるということを、リョウは知らないのだろう。
 穴を出れば一転、水路はだだっ広い。天井は半円を描き、全面コンクリート造りだ。両端に通路があり、真ん中に水が流れている。点々と明かりが設置されているが、全体的に薄暗い。

 

「ここは迷路だ、はぐれるな。迷子になったら確実に野垂れ死にだ」
「おまえこそ、迷路の正解はちゃんと頭に入ってんのかよ」
「オレを誰だと思ってる?」

 

 リョウは不敵に笑み、迷いのない足取りで水路を歩く。牢屋を教えろと、刃物を持って脅したのは自分の方なのに、立場が逆になってしまったようだ。
 水路は無数に枝分かれしつつ、ゆったりとした流れは絶え間ない。水路に呑み込まれるような錯覚を感じながら、無言でリョウの後を追った。

 

 

 

 

 壁に丸い穴が開いている。リョウが立ち止まったので、ヤマトは途端に嫌な顔をした。

 

「また穴かよ」
「これは空気口(くうきこう)。牢に続いている穴だ。牢は全てカードキーでロックされていて、守衛はセキュリティルームで監視カメラを使い、全ての牢と廊下をチェックしている。守衛は二人だけだが、油断するなよ」
「ああ、分かってる……、って、おまえ何座り込んでんだ?」

 

 リョウはポケットから折りたたみ式のポータブルPCを取り出し、高速でタッチパネルを操作し始めた。10センチ四方の小さすぎる画面の中で、次々にコードが弾かれていく。もちろんヤマトには何がなんだかさっぱりだ。

 

「おい何やってんだよリョウ」
「何を突っ立ている?」

 

 リョウが眉をひそめた。

 

「今、牢のロックを解除した。ユイが閉じ込められているのはB棟24R、ミナトは25Rだ。監視カメラは3秒間の映像をエンドレスで流すよう操作した。余程のことがない限り、守衛に気づかれることはないだろう。さっさと行け」
「おまえ相変わらず唐突すぎんだよ…」

 

 脱力しつつも、ヤマトは気を取り直す。

 

「っし、じゃあ行くか。この穴はB棟に繋がっているんだな?」
「出てすぐ正面が24、左隣が25だ」
「ああ」

 

 ……この時点で、もし。
 リョウの言うことがすべて嘘で、穴を抜けた先がセキュリティルームだったら、すぐに守衛に捕まるのだ。
 けれど、疑って引き返したって、ユイとミナトの処刑が断行されるだけで、あとは何も変わらない。 それならばもう、ヤマトは進むしかない。
 穴にもぐりこもうとした時、声が掛けられた。

 

「ヤマト。セキュリティシステムを抑えられるのは15分のみだ。ここで待っているから、必ず連れて来い」

 

 進むしかない。何があっても。
 暗い口を開ける穴を見据え、ヤマトはそれ以上の思考を断ち切った。

 

 

 

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