ネット小説 【LAM】 ≪15≫ | ACT4-E

表紙
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 腹ばいになって進む事30秒、出口に辿り着いた。鉄格子が3本はめられていたが、全力で押せば外れた。あまりにも脆い。やはりリョウの言う通り、収容所は穴だらけなのだ。
 それでもNAR(ナール)たちは皆、覇気のない顔で閉じ込められ強制労働を強いられている。本気で逃走計画を練れば成功するのだ。『街』に隠れ住むNARたちはそのようにして逃げたのだろう。ただ、『本気で』逃げようとするNARがほとんどいないだけだ。――自分を含めて。
 逃げ出せばあとは、アルカディアウイルスの蔓延する世界が待ち受けるだけだから。

 

(そのことを、AR(アール)達も知っているんだ)

 

 飼い慣らすには、餌と恐怖が必要だ。外は自由と死、中は強制労働と身の安全。どちらを取るかは恐らく、人間性うんぬんよりも、動物的な本能によるものだろう。
 誰だって、死は怖い。けれどヤマトは、それよりもさらに深い闇を見てしまった。
 鉄格子の先は真っ白の廊下だった。延々と続き、扉がずらりと並んでいる。静まり返った牢屋だ。
 目の前に24と書かれたプレートがはめこまれている。プレートに触れると、扉は横にスライドして開かれた。
 ゆっくりと、ユイが顔を上げる。
 簡易トイレとパイプ式ベッドしかない、狭い部屋だ。ベッドの上で、壁のすみに背中を寄せて、両膝を抱えうずくまっていた。
 憔悴しきった目が、徐々に見開かれる。

 

「ヤマ、……!」
「しっ。時間がない、すぐに行くぞ。ここから出るんだ」

 

 ヤマトの言葉に、ユイは戸惑いながらもうなずく。彼女の手を引いた。あまりの細さにぞっとする。ユイはここで、確実に訪れるはずだった死を、絶望と共に待っていたのだ。

 

「ミナトは隣にいるはずなんだけど、声が届かないから確信がないの」
「大丈夫だ、分かってる」

 

 続いて25の扉を開けた。ユイと同じようにうずくまり、ヤマトを目に入れたとたん驚愕したミナトを黙らせる。
 ミナトは防護スーツを着ていなかった。素のミナトを見るのは3年ぶりだ。

 

「ヤマト、どうしてここに」
「説明は後だ。逃げるぞ、立て」

 

 腕をつかんで引き上げる。瞬間、弾くように振り払われた。

 

「オレに触ったらだめだ……!」
「……。くだらないこと気にしてんじゃねえよ」

 

 紫色に染まった両腕。服の下も恐らく同じ色をしているのだろう。首の半分下まで侵食は進んでいる。
 ミナトは頑として、ヤマトとユイに触れさせなかった。

 

「いいか、セキュリティシステムが作動するまであと10分だ。この穴を抜けて、水路へ出る。そこからダッシュだ、覚悟しとけ」

 

 事情が掴めないながらも二人は頷いた。先にミナトが穴に入り、次にユイが膝まづく。そしてヤマトを振り仰いだ。
 泣き笑いのような表情。

 

「……黙って逃げ出そうとして、ごめんね」

 

 ヤマトは言葉を詰まらせた。返答を待たず、ユイは穴に入る。口元を引き結んで、ヤマトは結局答えないまま、ユイに続いた。

 

 

 

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