ネット小説 【未来感カルテット】 ≪6≫花純(6)

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 成は自転車通学だから、帰りは校門まで一緒だ。自転車を引きながら、成が心配そうに言った。

 

「おまえさ、この前二条と一緒に傘に入って帰っただろ。ああいうの気をつけろよ。第二図書室でたまたま聞いたんだけど、女子たちが噂してたぞ。二条は人気者だから、嫉妬されるぞ」
「えっ、そうなの。成は新しい図書室にも行くの?」
「新作のあみぐるみの本はあっちにしか置いてないからな。っていうか、そっちじゃなくておまえがヘンに噂されてるって話だろ」
「うーん、でもいいやそういうの。考え出すとキリがないし、めんどくさいもん」

 

 花純はあっさり言う。この上ない本音である。
 成はあきれたような、感心したような溜息をついた。

 

「悟ってんなー。まあ花純はいつも浮島といるもんな。浮島はそういう噂話は嫌いなタイプだろうから、確かに関係ないかもな」
「凛、成のことも気にしてたよ。いつもぼっちだって」
「なっ、そっ、そうなの?」

 

 成の声が上ずった。花純は首を傾げる。

 

「うん。成の悪い噂が流れてるのを気にしてたよ」
「そっそうなのか。いやまあそれは、心配かけて、悪いことしてるな。こ、今度謝ってみるかなー」
「別に謝ることじゃないんじゃない? というか成、顔赤いよ。何で?」
「う、うるせー」

 

 顔をそむけられた。花純はピンとくる。

 

「そっかー、ふーん。いいと思うよ」
「えっ、いいって何が? 浮島何か言ってた?」

 

 成の顔に喜色が浮かぶ。花純は首を傾げた。

 

「ううん、別に。でも今のままだと凛の方が精神的に男前だから、成はもうちょっとたくましくならなきゃね」
「それはまあ……分かってる」

 

 成は気落ちしたようにうつむく。花純は応援するよーと言いながらふと、思い出した。
 そういえば、凛は二条兄にメロメロだった……。

 

「浮島が、オレがぼっちなこと気にしてくれてんの、知ってるんだよ。班割の時にさりげなく誘ってくれたりして、ぼっちにならないようにしてくれてるんだ。それがなんとなく、情けなくてさ。オレも自分からどんどん声掛けてって、友達作らなくちゃならねーんだけど、前のトラウマなのかわかんないけど、どっかで友達はいない方がラクって思っちゃってんだよな。」
「あたしも友達だけど」
「花純は、ヘンな奴だから別枠なんだよ」

 

 あたしはヘンなのか……と花純はぼやく。成は笑った。

 

「オレも変わってるから同類」
「類友(ルイトモ)っていうんでしょ、こういうの」
「おう、そうだな。浮島と花純って、いつも一緒にいるけど同類っぽいにおいするの?」
「ちょっとするかも」

 

 一見すると、花純と凛は全然タイプが違う。凛はしっかり者で、明るい。花純はいつもぽーっとしている。でもどこか似ている気がする。だから一緒にいて楽なのだろう。
 ふと、成の表情が翳った。

 

「浮島はしっかりしてるから、クラスのみんなや先生の頼みごとを一人で抱え込むんだよな。見てて気になってさ。たまに教材運びとか、アンケートのまとめを手伝ったりしてるんだ」
「えっそうなの? 知らなかった」
「クラスで浮いてるオレが、人気者の委員長に近づくと、みんながザワつくだろ。だからコッソリやってんだよ。浮島が居残ってるときに声掛けたりさ」

 

 花純は目を丸くする。成にそんな甲斐性があるとは思わなかった。

 

「成って…成って…」
「見直したか」
「ヤラしい……」

 

 おいこら、と成が横目で睨んでくる。みんな恋愛してるんだなぁと、花純は思った。
 ふいに、母親のぐちゃぐちゃになった泣き顔が浮かぶ。

 

( ごめんね花純 )
( お母さんは、お父さんのことをまだ愛しているの )

 

 年齢の割に若くて美人で、自慢の母だった。世界で一番大好きで、世界で一番「ああはなりたくない人」だった。
 だから、恋愛を楽しむなんてこと、花純には考えられない。

 

 

 

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