ネット小説 【リィンの空】 後日談(2)-1

後日談【1】-3 ネット小説【リィンの空】 後日談【2】-2

 

 朝一番の仕事は、花に水をやることだ。
 冬の朝は、葉がキラキラしている。水をやると、さらに輝く。
 そのぶん寒いけれど、気分がスッキリするのだ。

 

「おはよう、リィン」

 

 朝ごはんはアレンが作ってくれる。
 ミルクパンと瑞々しいサラダ、コーンポタージュ。アレンは料理上手だけど、さすがにパンは焼かないから、定期的にリィンが買ってくる。

 

「アレン。今日は遅いの?」
「うん。夜11時過ぎるから、夕食は食べておいて。僕の分はいらないから」
「そっか」

 

 リィンはがっかりする。
 最近、アレンは忙しい。

 

 

 

 

 

 

「それは寂しいね」

 

 紅茶を飲みつつ、カトリナは言う。彼女の職場近くのオープンカフェだ。
 リィンは身を乗り出した。

 

「うん。そうなの。毎日さみしい。どうすればいいと思う?」
「夕食11時までがまんして、一緒に食べるっていうのはどう?」
「がまんできない。おなかが減るから」

 

 リィンはうつむいた。世の中、うまくいかないものだ。
 カトリナはため息をつき、

 

「アレンの仕事についていくわけにもいかないしなぁ」
「こっそりついていってもいいと思う?」

 

 カトリナはすぐに首を振る。

 

「危ないからダメよ。ケガするかもしれないし」

 

 アレンはそういう仕事をしている。いつもコートの内ポケットに、銃が入っているのだ。
 カトリナは慰めるように、ほほ笑んだ。

 

「アレンの仕事は波があるから、そのうちヒマになるよ。それまでの我慢だよ。ね?」

 

 アレンの仕事。
 リィンはふと、思った。仕事のことを、リィンは、分かっているようで分かっていない。

 

 

 

 

 

 

 今日もアレンは遅い。
 リィンは寂しい気持ちを持て余しながら、お皿を洗っていた。すると、玄関で呼び鈴が鳴った。
 時計を見る。午後8時。あまり遅い時間の来客は、歓迎すべきではないと、アレンからいつも言われている。けれど今は、人恋しさの方が勝った。
 玄関の扉を開けると、見知らぬ青年が立っていた。ディーンと同じ年齢くらいだろうか。深い黒の眼を見た時、リィンは背筋が冷たくなるのを感じた。
 やっぱり、開けてはいけなかったかもしれない。

 

「おまえがリィンか」

 

 低く、青年が言った。
 リィンはおそるおそるう頷き、尋ねる。

 

「あなたは、誰?」
「アレンの雇い主だ」

 

 リィンは驚いた。アレンは貴族に仕えていると聞く。貴族と言えば、雲の上の存在だ。
 びっくりして固まっていると、彼は口をゆがめるように、苦々しく、言った。

 

「アレンが誘拐された。代わりにリィンを差し出せと、犯人からメッセージがあった。私の仕事にアレンは必要な人材だ。だからおまえを、連れに来た」

 

 リィンはぽかんと口を開けた。そうすることしか、できなかった。

 

 

 

 

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