表紙
1 2 3 4 5 [6] 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 fin. 後日談

 

「どうしてあんなところで倒れていたんだ?」

 

 焼いた魚を口に運びながら、マルセルは尋ねる。リネットはうなずいて、

 

「うん、セシリアが行き倒れるなんて珍しいよね。まあ普段から食いしん坊で、よく『お腹へった……』って屋敷の廊下で倒れてたりするけれど。庭だったり、門の前だったりもあるけれど」
「……その辺で倒れるのは日常茶飯事なのか。エオウィン家の者はみな想像の範囲を超えていくな」
「まあ、それは否定しないれすけろ」

 

 ろれつが怪しいのは、魚をガツガツ頬張っているからである。ごくんと飲み込んでから、セシリアは本題に入った。

 

「わたしが第2王子の護衛をしているの、ご存知ですか? 領地管理庁のトップにいるあのお方なんですけど」
「ああ、リュートか。あれは私の兄弟の中で1、2を争う出来損ないだな」
「そう、その出来損ないで小心者の王子様なんですけど、残念ながらわたしが第一騎士として仕える予定なんですよね。全力でイヤなんですけど、これもエオウィン家の宿命だし、甘んじて受けようと思っている次第です。騎士の鏡です」
「……まあいい。続きを話せ」

 

 マルセルは半ば呆れているようだ。リネットは、セシリアがマルセルをいつ怒らせるかハラハラしている。

 

「リュートさまは領地を管理しなくちゃいけないんですけど、まあほとんど有能な部下がやってて、ご本人は毎日遊び歩いてるんですけど、先日管理庁に久々に登庁したら、なんと部下の9割に無視されたみたいなんです。それで、どうやらこのままじゃマズいとやっと気づいたみたいで。それで、真面目に仕事しようとして、手近なところから適当に定期調査を開始したら、なんとビンゴ! 不審な動きを見せる村が見つかっちゃったんですね」
「待て。その村の報告を聞いていないぞ。不審な動きがあればすぐ私に報告するように言ってあるはずだ」

 

 マルセルの表情が険しくなる。セシリアは肩をすくめた。

 

「それはそうですよ。リュートさまは手柄を自分だけのものにしたいんです。解決後にドヤ顔でマルセルさまと女王様に報告するつもりなんですよ。だからその村の調査に、手ゴマのわたしだけを行かせたんですから」
「騎士一人でか? 他の兵士もなしに?」
「はい、わたし一人で。だってあの方、わたし以外の手ゴマなんて、持ってないですもの」

 

 マルセルは長い溜息をついた。

 

「分かった。詳細を話せ。リュートには私から言っておく」
「えー。うまいこと言っておいてくださいよ。マルセルさまに言っちゃったっていったら、わたしが怒られるんですから。リュートさまって、マルセルさまを異常にライバル視してるんですよね。敵うわけないのに」

 

 ハラハラするリネットをよそに、セシリアは猫のように1回伸びをして、語り始めた。
 『問題の村』の詳細である。

 

 

 

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