表紙
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「最初に異変に気が付いたのは、パルタ・ジーク小隊長でした」

 

 木漏れ日がキラキラと零れていた。
 こんな事態でなければ、のんびりとお昼ごはんを食べながら、マルセルとお話がしたかったな、とリネットは思う。

 

「ここから3日ほど歩いた場所に、ユーディの村があるのをご存知ですか? 北の方角です」
「ああ、知っている。農耕と機織りをしている、歴史の古い小さな村だ。……確か村長はゴナ・ジーク――そうか、パルタ・ジーク小隊長は村長の息子か」
「そうです。さすがですねぇ。リュートさまは村の名前すら知らなかったですよ」

 

 リネットは、パルタ・ジークという名に聞き覚えがあった。確か出発前、門番が言っていたはずだ。「パルタ・ジーク小隊長があの辺り出身で、今里帰り中です」と。
 ということは、ユーディの村は、自分たちの目的地であるユーザの森に近いのだろうか?

 

「奇妙な報告でした。ほんとかな? って思うくらい。先日パルタ・ジーク小隊長が里帰りしたんですけど、村に人っ子一人いなかったようなんです。すっかり、みんな、消えてしまっていたんです」

 

 リネットは首をかしげる。

 

「村のみんなで慰安旅行にでも行ったのかな? 楽しそうだなぁ」
「そんなわけないだろう」

 

 マルセルが呆れている。顔に「おまえは馬鹿か」と書いてある。

 

「第一、あの村は貧しいんだ。日々の食い扶持を稼ぐだけでも精一杯で、旅行なんて行けるはずがない」
「そうなんですよ。だからリュートさまは最初、鼻で笑って、『そんなわけあるか。もう一度見に行け!』って言ったんです。で、ジーク小隊長はもう一度村へ帰ったんですけど……それっきり、戻ってこなかったんです」
「それはいつの話だ? どれくらい時間が経っている」
「……1か月です」

 

 さすがに申し訳なさそうに、セシリアが言った。マルセルは舌打ちする。

 

「長すぎる。すぐに対応が必要だ」
「わたしが今から行くつもりなんですけど……」
「セシリアか。確かに戦力としては十分だが――」

 

 マルセルはしばらく黙考した。

 

「いや、やはりやめておこう。いくらエオウィンの騎士とはいえ、一人では危険すぎる。セシリアは一度城に戻り、女王に報告するんだ。私とリネットは最速で旅を終えるようにする」
「承知しました」

 

 セシリアはうなずいて、立ち上がった。

 

「村に辿りつく前にマルセルさまにお会いできてよかった。リュートさまは、とにかくおまえが行け、誰にも言うな、解決して来い、ですもの。今後10年は確実に、ボンクラの名を欲しいままにすると思いますよ」
「本来なら不敬罪だが、今は不問としよう」

 

 マルセルも立ち上がり、リネットを見た。

 

「というわけだ。今までの3倍急ぐぞ」
「はいっ、マルセルさま」

 

 リネットは慌てて頷き、魚を飲み込んだ。が、骨が喉につっかえて咳き込んでしまい、またしてもマルセルに呆れられることになった。

 

 

 

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