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 リネットはゆっくりと、目を開けた。
 まぶたが重く、気だるい。そしてひどく、喉が渇いた。

 

「おはよう」

 

 ヒルトの声に、リネットはゆるゆると視線を動かした。彼は直接床に座って、足を伸ばしてくつろいでいるように見えた。いや、かなり顔色が悪い。くつろいでいるというより、疲れ切って休んでいる、というべきか。

 

「体調はどうだ?」
「すごく疲れてるけど、何とか大丈夫です。ヒルトさんは?」
「オレのことはいい。それにしても、よく頑張ったな」

 

 ヒルトの微笑が優しい。それでは自分は、成功したのだろうか。精霊を、自然に返すことができたのだろうか。
 窓の外に目を向けると、朝日がまぶしく煌めいていた。

 

「ひと晩、かかったんですか?」

 

 声がかすれる。ヒルトは苦笑した。

 

「3日だ」
「えっ?」
「喉が渇いただろう。水を持ってくる」

 

 3日。
 どうりで、身体が怠いわけだ。
 ヒルトがコップを持ってきてくれた。彼の腕を借りて、上体を起こす。頭がクラクラした。
 ふと、思い出す。ヒルトはずっと手を握って、支えていてくれた。3日間、ずっとだ。

 

「ありがとうございます、ヒルトさん」
「礼を言うのはまだ早い。あと少し。最後の仕上げが残っている」

 

 思わずたくさんのお水を飲みこんでしまって、リネットは咳き込んだ。

 

「も、もう終わりかと思ってました。ヒルトさん、やりきった感をすごく出してるから」
「まだ君の中に精霊が残っている。とはいっても、今までのように闇の中にいるのではなく、明るいゆりかごのような中にいるけどな」
「そうですか。よかった」

 

 頬がほころんだ。これで精霊は苦しまずにすむ。
 そして、自分も。

 

「仕上げは満月の夜だ。精霊の力がもっとも強まる夜に、森へ返す。解き放たれた精霊は美しいぞ。楽しみにしているといい」
「はい。ところでヒルトさん、満月の夜っていつですか?」

 

 ヒルトは優しく笑う。

 

「今夜だ」

 

 

 

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