ネット小説 【雪細工】 第2章(3)

第2章【2】 ネット小説【雪細工】 第2章【4】

 

 ピートを医者へ連れて行くと、そのまま入院となった。なりゆきで付き添ったカトリナは、ディーンと共に病院を出ると、軽く息をついた。

 

「疲れたなー」
「おい、大丈夫か? やっぱりおまえも診察してもらえ」
「医者は苦手。それよりも寝たいの」

 

 病院の前で待ち構えていた馬車に、手を上げる。御者が扉を開けた。

 

「今日は帰るけど、ピートの怪我が治ったら捕まえに行くよ。今度はジャマしないでね」
「ちょっと待て、おまえ足元ふらついてるぞ。家まで送る。医者が嫌なら、オレが手当てするから」
「大丈夫だよ。これくらい、日常茶飯事なんだから――」

 

 言ったそばから視界がブレて、カトリナは馬車へ寄りかかった。慌てて御者が手を伸ばしたが、ディーンの方が早かった。

 

「あんたは馬の準備をしてくれ」

 

 そのままカトリナを抱き上げて、馬車に乗る。広い胸に頬が押し当てられ、不覚にも心臓が跳ねた。
 馬車が動き出す。ディーンの腕が肩に回り、震動から守ってくれている。視線だけで見あげると、意思の強い双眸が窓の外を見ていた。
 この男は、揺るがない人間だ。
 自分の意思を持って、他人に左右されずにまっすぐ生きられる人間だ。
 心地いいと、感じた。力強い腕の中は、安心できる。このまま何も考えず、目を閉じて眠れたら、どんなに楽だろう。

 

(探せばもっと、楽な生き方があるだろ)

 

 ディーンの言葉が蘇る。瞬間、刺すようにな痛みが、胸に走った。

 

「カトリナ」

 

 ディーンが、名前を呼ぶ。
 まっすぐに、カトリナを見る。

 

「ピートを助けてくれて、ありがとな」

 

 ……名前なんて、どうせ忘れると、言っていたのに。
 ディーンの微笑みは、深くて、優しかった。カトリナはうつむくように、「うん」と返事をすることしか、できなかった。

 

 

 

 

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