ネット小説 【雪細工】 第2章(5)

第2章【4】 ネット小説【雪細工】 第3章【1】

 

 医者には入院を宣告された。火傷と高熱のせいだ。
 拒否する力は、もう残っていなかった。言われるがまま、パジャマに着替えて病室で横たわった。

 

「あとのことはやっておくから、大人しく寝てろ」

 

 そう言って、ディーンは病室を出て行った。ディーンの背中を見ると、切なくなる。思わず手を伸ばしたくなる。
 頼ろうとしているのだ。絶対にしてはいけないことを、しようとしているのだ。
 横向きに寝転がり、両膝を抱いた。
 夜が静かに、訪れようとしていた。

 

 

 

 

「どーしたんだよカトリナ、鬼の霍乱?」

 

 エメルトが見舞いに来たのは、4日後のことだ。どこから聞きつけたのか分かったものではないが、恐らく仕事の上司にも、カトリナの入院は知られているの違いない。
 カトリナはのそのそと起き上がる。まだ朝早いので、頭が働かない。

 

「これお見舞いの品。花にしよーかとも思ったけど、やっぱりカトリナには食い気だよなーと思って」
「……どーも。あんまり食べたくないけど、とりあえず頂いておくよ」

 

 果物籠をサイドテーブルに置くと、エメルトは椅子に腰掛けた。

 

「で、どう? その後は」
「思ったより体調不良が酷いみたいで、入院は1週間以上になりそう」
「いやいやそうじゃなくて、オシゴトの方」

 

 顔を上げたカトリナに、エメルトはニコリと笑う。

 

「そろそろ期日でしょ。仕事請け負ったの、3日前だっけ? あ、林檎食べる?」
「……アレン、怒ってる?」
「あいつは顔に出ないからねぇ。でもカトリナにこの仕事紹介したのはオレだし、なるべく長く頑張ってほしいなーと思ってるんだよ」

 

 エメルトはナイフで林檎の皮を剥く。
 ……あの冬の日。何もかもから逃げたあの日、エメルトに拾われた。雪の中、疲れ切って動けなくなったカトリナを、偶然通りかかったエメルトが、助けてくれたのだ。
 それ以来、がむしゃらに働いた。
 それが生きる価値だった。
 自分の中の、ドロドロした闇を、悪人を捕まえることによって慰めていた。

 

「そろそろ何らかの成果を挙げないと、ヤバイよ」

 

 エメルトが少しだけ笑って、言った。
 林檎の皮がとぐろを巻いて、床へ落ちた。

 

 

 

 

第2章【4】 ネット小説【雪細工】 第3章【1】

 

 

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